誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「神尾さん……」

 おそるおそる、閑を見つめる。

 自分に向けられる目はとても真剣みを帯びていて、小春はまた胸がギュッと切なく締め付けられてしまった。

 好きな人に助けてほしいと言われて、断れない人間がいるものだろうか。

(ああ……無理だぁ……)

 小春は心の中で、白旗をあげる。

 彼と体を重ねてしまった今、同居は自分にとってかなりハードルが高いが、仕方ない。一方的に忘れてくれと頼んで、それを受け入れてくれた閑の頼みだ。
 今度は自分が彼の望みをかなえる番だろう。

「わっ……わかりました。ご迷惑でなければ……」

 決死の覚悟でそう答えると、ずっと暗かった閑の顔が、明かりでもついたかのようにパッと明るくなる。

「よかった……」

 そして閑は、ギュッと握った手を引き寄せて、両手で包むようにして手を握る。

「小春ちゃん。じゃあ、よろしくお願いします」
「はい」

 閑の手はびっくりするくらい熱かった。
 そのぬくもりに、小春はドキドキしながら、しっかりとうなずいたのだった。

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