誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
当然、小春の言葉はショックだったが、小春が悪いわけではない。
むしろ自分が、だれかれ責任なく手を出す男だと思われてしまったとしたら、その汚名は返上したい。閑はそう思った。
(抱いてる最中に好きだと思うなんて、俺は馬鹿なのだろうか……いや、思ったんなら、すぐに口にするべきだったんだ……)
小春のしっとりした白い肌。絡みつくしなやかな腕。甘い声に、吐息。
全く知らなかった彼女の一面に、すっかり夢中になった閑は、素の、妙なエスっ気まで出して、弁護士の神尾閑ではない顔で彼女を抱いてしまった。
目を閉じると、今だって思いださずにはいられないのだが――。
(いやいや、それはまずい)
「よし」
閑はすっくと立ちあがった。
「おっ、切り替えたか?」
黒坪の入れたお茶をのみながら、槇が椅子の上でゆらゆら体を左右に揺らす。
「はい、切り替えました」
閑はきりっとした表情でうなずき、「どうぞ」と差し出されたお茶を黒坪から受け取り、ゆっくりと口に運ぶ。