誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
ガシャン……ガタンッ!
突然背後で皿が割れる音、そしてなにかが大きな音がして、小春は驚いて振り返る。まだ食事をとっていた客たちが立ち上がり、カウンターを覗き込んでいた。
「おいっ、大将、どうしたー、足滑らせたのか?」
「……って、大将……大将っ!?」
カウンターの中で転んだらしい、大将は立ち上がらない。
声もしない。
「えっ……?」
尋常でない雰囲気に、小春は呼吸を忘れてしまった。
「――小春ちゃん、どうした?」
わぁわぁと騒ぐ客たちの異変に気が付いたのか、背後から、いったん店を出たはずの閑が戻ってくる。そしてハッとしたようにカウンターの中に飛び込んでいきながら、叫んでいた。
「救急車……!」
(きゅうきゅうしゃ……救急車!?)
小春の全身から、血の気が引いた。