誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 運ばれた先の病院で受けた診断は、軽い脳梗塞だった。

「ううっ……よかったぁ……よくなかったけど、よかったっ……」

 早めに病院に搬送されたこともあり、命に別状はないという診断を聞いた小春は、病院の廊下で、安堵のあまり両手で顔を覆い、泣き出してしまった。

「小春ちゃん……大丈夫?」
「すっ、すみません……ホッとして……っ」

 小春はハンカチで涙を拭きながら、病院にまで来てくれた閑に、深々と頭を下げる。

「神尾さん、付き添ってくださってありがとうございました……!」

 今さらだが、倒れたあの状況で、とっさに体が動かなかった。
 すぐに救急車といってくれた閑には感謝の気持ちしかない。
 ひとりではもっと取り乱していただろう。

「いや、そんなこと気にしないでいい。うちのボスも、なかもと食堂にはお世話になってるし、むしろ、『行ってこいっ!』って、送り出してくれたんだから」

 閑の言うボスというのは、槇(まき)法律事務所の所長であり、閑の上司である弁護士だ。小春も面識がある。

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