誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「もう終わり?」

 閑がつまらなさそうに、持っていたポテトを自分の口の中に入れる。

「もっと食べさせたかったな」
「そんなこと言っても、私だって手元にポテト、あるんですよ」

 小春は苦笑して、手元のポテトを一本、閑の口に持って行った。

「ほら……」

 次の瞬間、閑がふっと笑って、小春の持っていたポテトをぱくりと口の中に入れる。けれど閑の唇は、ポテトだけでなくそのまま小春の指先を、柔らかく食んでいたのだった。

 首筋からまっすぐに、腰のあたりまで、電流が流れたような気がした。

「――」

 かじりついたまま、閑がいたずらっこのような目で、小春を見詰めている。

 少し明るい目が、キラキラと光を放っているように見えた。

 これは、閑にとって他愛もないいたずら。じゃれた犬や猫に、あまがみされたようなものだ。
 痛いわけでもなんでもない。

 けれど、閑のこの行動は、小春にとって刺激が強すぎた。

 あの夜――。

『小春……』

 熱っぽく名前を呼んで、自分の裸の肩の先に、飢えた獣のように閑がかじりついた、あの甘美な衝撃を思いだして、顔が真っ赤になってしまった。
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