誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「めっ、迷惑だなんてっ……」
小春は激しく首を振った後、アハハと苦笑した。
「でも、断るための嘘としても、あの、私たち、全然似合わないですよね」
「へ?」
閑がきょとんとした表情になる。
まさか小春の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。そんな顔をしている。
だが小春にしたら、そんな顔をされる意味が分からない。
閑は、誰もが目を見張るような長身の美男子で、弁護士、しかも心優しく、親切な男だ。
「だから、私みたいな、なんのとりえもない女の子では……いや、嘘ってわかってるんですけど……」
言い訳のように、ごにょごにょと小春はつぶやく。
たぶん、小さな声過ぎて閑の耳には聞こえないだろう。
「そういうの、嘘でも……ちょっと……」
ふたりで出かけられることに舞い上がって、人からどう見えるかなんてあまり考えていなかった。
小春は、閑のセンスが通りすがりの人に疑われるのではないかと、ちょっぴり申し訳ないなと思いつつ、膝の上で手をグッと握りしめていた。
みるみる曇っていく閑の表情に、気が付くこともなく――。