誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「だってお前、せっかく俺といるのに、つまらなさそうに」

 瑞樹は優雅にワイングラスを揺らして、ゆっくりと唇をつける。
 そんな何気ない仕草も絵になる男だ。

「俺といるのにも何も、待ち合わせたわけじゃないだろ。瑞樹はあいかわらず、自分を中心に世界が回ってるよな」

 閑は苦笑して、手元のナッツを口に運んだ。

「そういうお前だって、最近、グループの集まりに全然顔出さないって聞いてるぞ」
「ああ……まぁね。いろいろ忙しくて」
「師走だからな。お前のような仕事では忙しいだろう」

 瑞樹はうんうん、とうなずきながら、頬づえをついた。

(仕事……かぁ……)

 脳裏に小春の顔が、思い浮かぶ。

 この数週間、ずっとなかもと食堂のことで忙しくしていた。いや、店の売却の手続きや、権利関係は、大したことはない。

 問題は、小春だ。

 小春と住むようになって、十日ほど経つが、ビックリするほど進展がない。
 進展がないどころか、もしかして自分とは距離を取ろうとされているのでは?と思うくらいだ。

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