誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「凹むって……まぁ、そうだな」
一瞬、ムッとしかけた閑だが、彼の言うことは間違っていない。なので、即座に素直に受け止める。
「だろ? お前は、わざとヘラヘラニコニコして周囲を油断させておいて、本当は芯から打たれ強い男だ」
瑞樹はそう自慢げに言い放つと、閑のナッツを勝手に奪い、口に入れた。
(めちゃくちゃいうな、こいつ……)
だが悪気はないのはわかっているし、意識しているわけではないが、そういう一面が自分にあるのもわかっている。
「だから珍しい。ぜひ聞いておきたいところだな」
「ったく……」
(とはいえ、こいつに恋愛相談したってなぁ……)
閑はグラスに残ったワインを飲み干して、下唇をかみしめる。
瑞樹とは中学校からの親友だが、自分が知っている限り、瑞樹からまともな答えが返ってくるとは思えない。
もちろん、南条の御曹司がモテないはずはなく、いつも女性に囲まれていた。それは事実だ。まるで大輪の花のような彼の周りには、女性が蝶のように群がっていた。だが、それだけだ。誰かひとりと真剣に付き合ったところを、閑は見たことがなかった。