雲の上には
数日後、目を覚ました。
(あぁまた死ねなかったんだ)
私の腕には点滴。個室だった。胃洗浄をし、無意識のままもがき苦しんだという。何度も姉の名前を呼んでいたらしく、母から連絡を受けた姉が、私のそばにいてくれた。口が渇き、うまく話せない。黙ったまま、不安そうに見つめる姉の目をじっと見ていた。
退院後、姉は勤務先の美容室を休み、私のそばにいてくれた。たわいもない会話、姉がはりきって作るごはんを家族みんなで食べる。私の気持ちはどんどん楽になって行った。
数日したある日、私は姉にレイプされた事実を告白した。お金を握らされたことも、ビデオで撮影されたことも。
「ごめんね、ごめんね、私のせいだ…」
姉は大泣きした。
「でもね、お金よこされたからね、援助交際だよ。」
と、私。しかし姉の涙は止まることはなかった。
「あのね、ゆき。お金を握らされてもね、れっきとしたレイプなんだよ…。」
そういい、また泣いた。泣いてる姉をみて私も悲しくなった。その時はレイプされた事実よりも、それを告白してしまったことで、姉を悲しませてるという事実の方が、何倍も私には辛かった。
15才という年齢。その時姉は22才。レイプ以外でも、十分法に触れる行為。姉は、親に知られたくないという私の気持ちをくんでくれ、どうにかならないかと、姉の親友と、その姉に相談をしていた。やっつけてやりたい。そんな気持ちだったと思う。
しかし、親友の姉から、
「美紀(姉の名前)、警察に通報しよう。ちゃんと罪を償ってもらおう。」
と助言をもらった。そして、姉がいくら成人していても、私には両親が健在であり、未成年ということから、警察に通報するためには両親に話さなければならないという事も教えてもらった。
「おねぇちゃん、なんもしてあげられなくてごめんね。ゆきばっかり辛い思いさせてごめんね。」
姉は私の為に一晩中泣いてくれた。その姉の気持ちに応えるためにも、両親へ話すことを決意した。とは言っても、私より先にまず、姉が母に伝えてくれることになった。
朝、母が起きる時間まで、姉と二人、抱きしめ合って眠った。退院後、久しぶりの睡眠だった。
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