雲の上には
帰り道、三人で夕飯を食べた。
「どうだった?少しは楽になったか?」
と、父。
「うん!なんだかなんでもやれちゃいそうな気分なの!」
と、私。
実は催眠をといてもらった後、部屋で先生と二人で少しお話をした。そして、レイプされた事実を話した。先生は「辛かったね。もう大丈夫だよ。」と、やさしく頭を撫でてくれた。
月に一回のペースで通うことになった。その間、「儀式」は行われることはなかった。我慢できた。母は仕事をやめ、一日中私と一緒に過ごしてくれた。そのため、家の収入も減り、私のカウンセリング代、そして交通費も、母がやりくりしてやってくれていたため、家族の思いに応えたかった。
学校へは行けない。だけど、私には笑顔が増えた。私が笑顔だと家族も安心してくれた。やっと私は悲しませる子供から脱出できた気持ちで、うれしく思った。高校も、今は無理でも、来年チャレンジしてみようかと、考えていた。
その後、何度か通ってから、どんどん気持ちは楽になって行った。そこで、治療をしてもらいに今までは両親が付き添ってくれていたが、一人で行くことにした。先生とも何度か会う度に私はすっかり安心していたのだ。
そして一人で行った。いつものように、まず話をして、隣の薄ぐらい部屋のベットに横になる。心地いい音楽。聞き慣れた先生の声。
が…いつもと少し様子が違った。先生の手がスカートをはいている私の足に触れている。上下に撫でるように。緊張が走る。レイプされた日のことがフラッシュバックされる。しかし、自分にいい聞かせた。(先生は私を安心させるために撫でてくれているのかもしれない。)
そう思い込もうとした。が…先生の手が徐々にスカートの中に入ってくる。そしてパンツの中まで入ってきた。もうろうとした意識の中、また私は人形になった。
治療終了後、慌ただしくその場を立ち去った。皮肉にも、外は雨が降り始めた。
(私、なんで生きてるの?)
降る雨をよけることもせず、傘をさすこともせず、ただ雨が降ってくる空を見上げ、泣いた。
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