明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

「行基さんが？」
「はい。行基さんは心の優しい人ですけど、仕事中は副社長としてとびきり厳しいので、そんなことを言うとは驚きました」


私もびっくりだ。怒らせたのは私なのに。

ただ、どれだけ考えても、どうして怒ってしまったのかわからない。


「あの……行基さんがなにに腹を立てられたのかわからなくて。私が悪いのでしょうけど……」

「そうなんですか？　差し支えなければ、どんな会話をしていて行基さんがへそを曲げたのか教えてくれませんか？」


私は思いきって昨日の会話を大まかに伝えた。


「なるほど」


すると一ノ瀬さんはケラケラと声を上げて笑いだす。


「あの、なにか……」
「芸妓さんっていうのが多分いけなかったんだと思います。どんな仕事をする人かは知っていますよね？」
「はい。舞のお上手な人たちだと」


私が答えると、彼は不思議そうな顔をして私を凝視している。


「それだけ？」
「はい。他になにか？」