明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
もしかして違うの? まつはそう教えてくれたのに。


「そうか。知らなかったんですね。芸妓さんというのは、たしかに舞や音曲などで客をもてなす人たちのことなんですが、その客は主に男で」
「えっ……」


舞台で舞を披露する人のことではないの? 女性は観ないの?


「まぁ、その、あれです。もちろん芸を売る人たちではありますが、男のほうには下心ある輩もいるもので、芸妓の中には一人前になるための莫大な費用を出してくれる特定の男がいた人もいます。そういう男が付くと、水揚げもあって」

「水揚げって?」


なんのこと?


「うーん。若いお嬢さんには言いにくいですけど、同衾して自分だけの女にすることかな」


つまり、体を交えるということ?


ということは、『芸妓さんのようになりたい』なんて、とんでもないことを行基さんに言ってしまったの?


「私、なにも知らなくて。ただ舞が上手な方だとお聞きしていたので、そうなりたいと……」
< 129 / 332 >

この作品をシェア

pagetop