明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「もうその話は終わりだよ。さて、風呂に入りたい。浴衣を選んで」
「はい!」


彼に許されたという弾んだ気持ちでうっかり廊下を走ってしまい、ハッとして止まると「お前はそのくらい元気なほうがいい」と笑われてしまった。



風呂と夕食が済んだあと、また彼の部屋へと足を運ぶ。


「行基さん、本と辞典をありがとうございました。私、すごくうれしくて」
「もう読んだのか?」
「いえ……。辞典を開いたらそれを読むのが楽しくなってしまって、本はまだ」


正直に答えると彼は口元を緩める。


「辞典を読みふけるとは、やはり面白い女だ。毎日笑って暮らせるのだから、簡単には手放せないな」


それは……改めて許すと言ってもらえているのだろうか。


「行基さん、私……精いっぱいお仕えします」


そう伝えると、彼は小さくうなずいてくれた。
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