明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

最初から私に笑いかけてくれた一ノ瀬さんとは違い、藤原さんはニコリともしない。

このような場で緊張しているというのもあるかもしれないが、少々怖く感じた。

だけど、行基さんの近くで働いているのだから、優秀な人に違いない。


「あやです。不慣れなもので、ご迷惑をおかけするかもしれません。どうぞよろしくお願いします」


深く頭を下げると「ですから、私たちにそのような挨拶はいりませんよ」と一ノ瀬さんは笑っている。


「すみません、ちょっと社長のところに行かねばなりませんので失礼します」


一ノ瀬さんは藤原さんに「頼んだ」と小声で伝え、離れていった。


「本日の進行は聞いていらっしゃいますか？」
「はい。大雑把には。行基さんや一ノ瀬さんにお任せしておけばいいとお聞きしております」


この場にいるだけでも緊張するのに、なにか重要な役割を与えられても困るのが本音だ。

でも、できるだけのことはしようと思っている。