明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
それから藤原さんと言葉を交わすことなく、津田紡績の人たちがせわしなく動いている様子をじっと観察していた。

こんなドレスを纏っていなければ、あそこに加わり手伝いたいくらいだ。


今日は、あれから大至急で仕立ててもらった、引きずるほど長い裾のローブ・デコルテというドレスを身に纏っている。
これが西洋では正装らしいのだ。

桜色の正絹を使っているからか光沢が美しく、同じ色の布で作った二の腕まである長い手袋も着用している。

そして開き気味で恥ずかしい首元には、たくさんの宝石を使ったネックレス。

重厚で艶やかで……卒倒してしまいそうなので値段を聞くことができないほどのもの。


「あや」


しばらくして行基さんが来てくれた。
すると藤原さんは離れていく。

行基さんは燕尾服という、裾が燕の尾のようになっている上着と、白い蝶ネクタイが印象的な洋服を纏っている。

まったく違和感なく着こなしているのがさすがだと思う。
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