明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「表情が硬いな。緊張しているのか?」
「こんな華やかな世界は初めてですもの」


今日のこのパーティのために、津田紡績はいったいいくらかけたのだろう。

それだけのお金をつぎ込んでも有益な会なんだと考えたら、副社長の妻として絶対に失敗は許されないと手に汗握る。

しかも、藤原さんにあんなことを言われたばかりだし。


「大丈夫だよ。あやはいつも通り笑っていればいい」
「はい」


そうは言っても、ドアの隙間から中の様子をチラッと見ただけでため息が出そうになる。
想像以上の人数と、きらびやかさだったからだ。


「行基。失礼のないようにしなさい」


そこに行基さんと同じように燕尾服を着たお義父さまがやってきた。

そして隣には、真っ白なローブ・デコルテ姿のお義母さま。

背筋はピシッと伸び、おどおどしている私とはまるで違う。
高貴な情調が満ちあふれている。

ああでなくちゃ。
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