明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「わかっております」
「あやさん、粗相のないように」
「かしこまりました」


お義父さまに釘を刺され、ピリッと緊張が走る。


祝言のあと、何度か行基さんとここ本邸に足を運び、両親と食事をともにした。

私は作法を間違えないことで頭がいっぱいで、気の利いた言葉ひとつ口にできず、いつも返事ばかりだ。

おそらく頼りない嫁だと思われているに違いない。
今日こそは、なんとか役に立ちたい。

とはいえ、仕事についてなにも知らない私は、行基さんやお義父さまの邪魔にならないように気をつけて、ただ笑顔を振りまくことくらいしかできない。


「さて、行こうか」


行基さんに腕を握るように促され手を添えると、彼は部屋の中へと進んだ。
すると、談笑していた人々の視線が瞬時に集まる。

どうしよう。もう緊張で足がガクガクだ。

お義父さまが前に立ち、挨拶を始める。

行基さんはその横で。
お義母さまと私は少し離れたところでひたすら笑みを浮かべていた。
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