明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
お義父さまの挨拶が済むと、食事が提供された。
西洋式で、今日のために招いている有名な料理人の手によるフランスの料理の数々がテーブルに並ぶ。

私たちも用意されていた席に着き、食事を始めた。


「あや、マナーは俺を見て真似てごらん」


隣に座った行基さんが小声で囁いてくれたけれど、勉強済みだ。


「はい。ですが大体は把握しております」


そう返すと彼は目を丸くしている。

一ノ瀬さんに頼んでマナーに関する書物を用意してもらい、できる限りの知識は身に着けてきた。

とはいえ、実際にナイフとフォークを使うのは初めてだったので緊張は隠せない。

出された牛肉がうまく切れるか心配だったものの、なんとかなった。


でも、せっかくの料理なのに味わう暇がない。

嫁ぐ前に一橋家で作法を厳しくたたき込まれたときもそうだったけれど、一つひとつの所作に気をつける見栄えのいい食事というのはせっかくの料理の味をなくしてしまうらしい。
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