明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
なんて幸せな時間なのだろう。
しかし、家に帰ればそれも終わってしまう。


「どうかしたの?」
「い、いえっ」


突然黙り込んだからか、彼が私の顔を覗き込む。

こんなに近い距離で視線を感じると、胸が苦しくなってしまうからやめてほしい。


「きみの笑顔は本当に美しいよ。仕事で少々いらだっていたのだが、もやが晴れたようだ」

「なにかあったんですか? あっ、いえ……なんでもありません。すみません」


とっさに首を突っ込みそうになり、慌てて発言を取り下げた。

誰かが困っていると気になってしまう性分はどうにもならないけれど、出会ったばかりの人の話に係わるなんて図々しいにもほどがある。


「ははは。面白い人だ。少しバカにされただけだよ。もう慣れてはいるが、腹が立つのは抑えられなくてね。まだまだ未熟者だ」

「そんな。バカにされたら腹が立つのは当たり前のことです。未熟なのは、バカにした相手ですわ!」
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