明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「これだけ働いているんだから、少しくらいいいだろう?」

「まあ、行基さんが社長として手腕を発揮されるようになってから、業績はさらにうなぎのぼりですから文句は言えませんが」


ふたりは社長と秘書の会話をしているが、本当に仲がよく、信頼しあっているのだとわかる。


「私、すぐに支度をしてまいります!」


メンチボーは高級品だそうだ。
それなら格式の高い料理店に行くのかもしれないと、着物を着替えに部屋に向かった。


十分ほどで慌てて着替えを済ませ玄関に向かうと、ふたりの姿はない。

玄関から顔を出してみると、門の向こうから話し声が聞こえてきた。
けれども、ひとりは女性の声だ。

女中の誰かかしら?

私は行基さんに買ってもらった履物をはき、外に向かった。

門まで行くと、知らない女性が私に気づきハッとしたような顔をする。

そして、慌てたように頭を下げて去っていく。


おそらく私より少し年上の、色白で品のある美しい女性だった。
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