明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～
「行基さん、今の方は？」

「あぁ、近くに住んでいて幼い頃三人でよく遊んでいた、妹のような存在の人だよ。久しぶりに会ったから挨拶を」
「そう、ですか……」


ざわっと胸に妙な感覚が走る。
こんなことは初めてだ。

それがなんなのかはわからないまま、行基さんがいつものように私の手を支えて人力車の乗せてくれたので、笑顔を作った。


それから時折、その女性を見かけるようになった。
朝、行基さんをお見送りするときに見かけることもあれば、街に買い物に行くときも。

近くに住んでいるはずなのに、それまで一度も見かけなかったのが不思議だ。

その日は、注文を出してあった行基さんの新しいシャツが出来上がり、とわが取りに行くと言うので、気分転換に私が行くことにした。

外出しようとすると、その女性とすれ違った。


「あのっ」


行基さんのお知り合いならば挨拶をしておいたほうがいいだろう。

そう思った私が声をかけると、立ち止まってくれる。
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