明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
まつは『ご令嬢』と口にするが、一橋家は落ちぶれること甚だしい。
父は子爵という爵位を持ち、今は宮内省に勤めている官僚ではある。
しかしその父の浪費癖がたたり、祖父の代は女中が二十人もいたのに、今やまつを含めて三人だけ。
それでも、華族であるが故、それなりの品格を求められている。
「だって初子さんが、お団子をくれないんだもの」
「あやだって!」
もう少しで取っ組み合いの喧嘩になりそうになったとき、「あや!」という母の大きな声がした。
まつはスッと部屋の端に寄り、小さく頭を下げている。
「はい、なんでしょう?」
私は、叱られるなら初子さんも同罪だと思いつつ、母を見上げる。
「この家の物は初子と孝義の物です。あなたはおこぼれでありがたいと思いなさい」
母の言葉が納得できない私は、口を開く。
「どうしてでしょう? 三人で分けあえばよろしいと思います」
正論を述べたつもりだったのに、母の眉がキリリと上がった。
父は子爵という爵位を持ち、今は宮内省に勤めている官僚ではある。
しかしその父の浪費癖がたたり、祖父の代は女中が二十人もいたのに、今やまつを含めて三人だけ。
それでも、華族であるが故、それなりの品格を求められている。
「だって初子さんが、お団子をくれないんだもの」
「あやだって!」
もう少しで取っ組み合いの喧嘩になりそうになったとき、「あや!」という母の大きな声がした。
まつはスッと部屋の端に寄り、小さく頭を下げている。
「はい、なんでしょう?」
私は、叱られるなら初子さんも同罪だと思いつつ、母を見上げる。
「この家の物は初子と孝義の物です。あなたはおこぼれでありがたいと思いなさい」
母の言葉が納得できない私は、口を開く。
「どうしてでしょう? 三人で分けあえばよろしいと思います」
正論を述べたつもりだったのに、母の眉がキリリと上がった。