明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
だけど女の立場としては、自分ひとりだけを見ていてほしい。

他の人になんて目をやらないでほしい。
ましてや、子を設けるなんて……耐えられない。

私が思い描く“情熱的な恋”とはそういうものだ。


行基さんは『俺としよう』と言ってくれたけれど、私の考えとは違うのだろうか。

私とも、そして章子さんとも……ということ?


「あぁっ!」


考えが堂々巡りをしてしまい、頭を抱える。

ほんの少し前までは、愛してもらえなくてもそばにいられるだけで幸せだなんて思っていたのに。

一度愛される喜びを知ってしまうと、離したくなくなる。

だけど、私にはどうすることもできない。


人の心が誰かに指示されて動くものではないと、初子さんと周防さんを見て知っているからだ。

愛されたいと願うなら、愛したいと思うような人間でいなければならない。

行基さんの愛が欲しいなら、彼が求めるような妻に。


「頑張るしかない」


私は決意をわざと口に出して、自分の気持ちを引き締めた。
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