明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
それからは、行基さんの妻として、そして津田家の嫁として、どんな女性が理想的なのかだけ考えて行動した。

突拍子もない発言は控え、当たり障りのないことだけ口にして、日中は部屋にこもり、一ノ瀬さんに頼んで買ってきてもらった経済に関する書物をひたすら読んでいた。


恋愛小説を読んで胸をときめかせている場合ではない。
私の夫は一流の会社の社長なのだ。

またあのパーティのようなものも催されるだろう。
それなら、なにを聞かれても困らないようにしなければ。


「行基さん、お疲れでしたら肩でも揉みましょうか?」


風呂上がりに声をかけると、彼は首を振り私を手招きする。
そして、彼の膝の上に座らされ髪を撫でられる。

もはやこれは習慣化してしまった。


「肩揉みはいい。それより、お前の話を聞かせてくれ。今日はなにがあった?」
「と言われましても、特になにも……」


彼に指摘されて初めて気がついた。
私、なににも心が動いていないわ。
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