明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
章子さんにあんな話を聞かされるまでは、毎夜彼の膝の上で、その日感動したこと、楽しかったこと、新しい発見などを話し、それを彼は『うんうん』と目を細め相槌を打ちながら聞いてくれた。


「なにもって……。なにかあったのか? 最近のあやは少し変だぞ。元気もないし、ほとんど出かけることもないそうじゃないか」


女中に聞いたのか……。


「気のせいです」


そう言いながら笑顔を作ってみせたのに、彼は眉根を寄せる。


「お前は鳥でいいんだ。自由に飛び回りたくさんの世界を見て喜びを知るがいい。その代わり、羽を休めるのは俺の腕の中だけだ」


本当に戻ってきてもいいの? 
あなたは、章子さんと一緒にいたいのではないの?


行基さんはすこぶる優しい人だ。

私を妻としたからにはと、自分の気持ちに蓋をしているという可能性だってある。

だけど……章子さんにところに行ってくださいと、手を離すなんてことはできない。
< 215 / 332 >

この作品をシェア

pagetop