明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
もう私の心は彼に囚われてしまった。
彼のところにしか居場所がない。

そんなことを考えていると、顔が険しくなってしまったようだ。

行基さんは私の頬をつねり、「笑顔がないぞ」と促す。


「すみません。そうですね、笑っていないと」


彼と一緒にいられるこの瞬間を笑顔で過ごせなくてはもったいない。

私が口角を上げると、彼も白い歯を見せた。



翌日から、笑顔でいることを心がけてはいたものの、どうしても今まで通りというわけにはいかなかった。

行基さんを失いたくない、嫌われたくないという気持ちが先立ち、思いきった行動なんてとてもできない。


「子ができたら……」


ふとそんなことを考えている自分に嫌気がさす。
それではまるで、行基さんの心をつなぎとめるために産むようなものだ。

そんなの、生まれてくる子がかわいそうだ。

だって……もしかしたら私がそうだったのかもしれないからだ。
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