明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
結局母は亡くなり、父は一橋の母と今でも一緒に暮らしているわけだけど。

そんなことを考えていると、藤原さんが訪ねてきた。


行基さんが仕事で忙しいと、一ノ瀬さんや藤原さんが必要なものを取りに来たり、はたまた私が寂しがっているかもしれないと心配する行基さんの配慮で、小説の差し入れをしに来てくれることすらある。


「いらっしゃいませ」


貞に呼ばれて玄関で藤原さんを出迎えると、彼は小さくお辞儀をする。


「突然申し訳ありません。社長に書類を持ってくるように頼まれました」

「はい、探してまいりますので、上がってお茶でも」


棘のある言葉をしばしば口にする彼が少々苦手ではあるが、行基さんを支えてくれているのだから、できるだけもてなしたい。


「ありがとうございます」


私は客間に彼を通して貞にお茶を頼んだあと、教えられた書類を探しに行基さんの部屋に向かう。

すぐにその書類は見つかり、客間の藤原さんのところに戻った。
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