明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「ございました。こちらでよろしいかお改めください」


お茶を飲んでいた彼の斜め前に座り書類を差し出すと、すぐに確認を始める。


「はい、たしかに」


いつもはこれで帰っていくのだが、彼は立ち上がろうとせず私に視線を向けた。


「あやさんは、一橋家のご令嬢ではありますが、お妾さんのお子さまだとか」


唐突に出生について尋ねられ、頭が真っ白になる。


「……はい。その通りです」


行基さんも承知の上で私を受け入れてくれているし、隠し立てするのもおかしいと思い、肯定の返事をする。


「社長はだまされたのですね。津田紡績のことを考え華族の令嬢と婚姻関係を結んだつもりだったのに、実は妾腹の子だったなんて。私たち商売人をバカにするのもいい加減にしていただきたい」

「バカになど……」


断じてそんなことはない。
堕落した生活を送る一橋の父より、行基さんのことを尊敬しているくらいなのに。
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