明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「私……」


なんと言ったらいい?

『嫌』と心が叫んでいる。
だけど、行基さんの援助がなければ、子はどうなってしまうの?


彼女の家も津田家ほどではないが立派だ。
彼女は女学校までは通ったようだし、そこそこの財力はあるはずだ。

だけど、家族は父親ひとり。
今はよくても、父親がもし亡くなってしまったら、そのあとは? 
行基さんの子なのに、みじめな生活を送るの?

様々なことが瞬時に頭を駆け巡り、胸が苦しくなる。


「本当に、行基さんの子、なんですか?」


最後にもう一度だけ尋ねた。
すると彼女は罪悪感からか目を伏せ「はい」と答える。


「そう、ですか……」


私は彼女の懇願に返事を出すことなく立ち上がり部屋を出た。
そして玄関へと向かう。


「奥さま、どちらに?」


すると待機していてくれた黒岩さんが私に尋ねる。
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