明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
情熱的な恋をしようと言ってくれた彼は、そんな人じゃない。
そう思いたい。

けれども、章子さんの衝撃の告白に打ちのめされてしまい、とても冷静にはなれなかった。


津田の家に戻ると、すぐに自分の部屋に行き、しばらく目を閉じる。

心を落ち着けようとしたのに、行基さんとの思い出が次々へと頭をよぎり、ちっともうまくいかない。

しばらくして、すくっと立ち上がり、背筋をシャンと伸ばす。
そして、息を大きく吸い込んでから舞を踊り始めた。


いつか行基さんに見てもらいたくて、毎日毎日練習を積んできた。

厳しい先生はなかなか褒めてはくれなかったけれど、行基さんと初めて肌を交えたあと、舞に艶が出てきたと言われて、恥ずかしくてたまらなかったこともある。

だけどそれは褒め言葉で、彼の影響力の大きさを感じた出来事でもあった。

行基さんに出会ってから、すべてが彼を中心に回っている。
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