明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
一階の貸本屋には天井に届くほどの本棚に本がびっしり並んでいるが、ここにもたくさん積まれている。


「やらせてもいいかなぁ。ひとりだしどうでもいいやなんて思ってたら、いつの間にかこんなぐうたら生活してて……。ハハ」


乾いた笑みを漏らす彼だけど、奥さんと離縁したという二年前からひとりで貸本屋を切り盛りしてきたのだから、忙しかったのかもしれない。


「任せてください。触ってはいけないものかあれば、言っておいていただけると……」

「特にないよ。しいて言えば本が大事だけど、一橋さんなら大切に扱ってくれそうだし」
「もちろんです」


角田さんを一階に追いやり、早速掃除の開始だ。

布団を干し、本をとりあえず全部居間に移して隅々まで掃除をすると、見違えるほどピカピカになった。


「汚れちゃった……」


一橋家で女中として働いていた頃のように、あまりに夢中になって片付けをしていたので、着物が汚れてしまった。
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