明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

「あやさん、本当に申し訳ありません。まさか、出ていかれるなんて。そんな選択があるとは思いもよらず……。しかもお腹に子供まで……」


そう、なのか……。
私は自分が出ていくことが最善だとすぐに思った。


「この子は行基さんの子ではありません。本当は、あの日より前に懐妊したことを知っていました。ですが、周囲に知られたら連れ戻されるのではないかと、誰にも相談できず……不安でたまりませんでした」


『あの日』とは、倒れた日のこと？　
それじゃあ私に挑発的な発言をしたとき、もう知っていたの？


「もし行基さんの子ということにできれば、この子を実家で育てることができるのではないかと考えだしたらそれしか浮かばなくなり、お慕いしているなんて言ってしまいましたが、お慕いしているのは、兄としてです」


彼女はポロポロ涙こぼしながら必死に言葉を紡ぐ。


「もう十分です。章子さん、あんまり泣くとお腹の子に障ります」