明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

彼女に少し近づき声をかけると、行基さんが口を挟む。


「あや。簡単に許してはいけない。章子のためにもならない」


彼は毅然とした態度で「章子」と続ける。


「お前には、他人を思いやる気持ちが足りない。傷つけられ苦しい思いをしてきたのも承知している。だから、ようやく得た安住の地を逃したくなかったのもわかる。だが、他人を傷つけて得た幸せなんてまがい物だ」


行基さんの言葉に彼女は何度もうなずく。


「あやのように強くなりなさい。彼女はなにがあっても前を向いている。そして、周りの人間に気を配れる優しさを持っている」


まさか、そんな評価をしてくれているなんて驚いた。


「はい。本当にすみませんでした」


章子さんは手をつき頭を下げる。
すると行基さんまで私に向かって頭を下げるので、目を瞠る。


「妹が申し訳ない。甘やかした俺たちの責任だ」
「そんな……」

「あやさん。俺からも謝罪させてください。章子がとんでもないことをしました。本当に申し訳ない」