明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
一ノ瀬さんも畳に頭をつけ、謝罪してくれた。

章子さん……あなたはこんなに愛されているのよ?

旦那さまに暴力を振るわれたという事実は、彼女に影を落としたかもしれない。
でも、もう忘れて明るく生きていってほしい。


「章子さん、やり直しましょう。ねぇ、一緒に子育てしましょうよ。ひとりだと不安だわ。子供同士、仲良くなれるといいわね」


私がそう言うと、彼女は大粒の涙を隠すことをせず、もう一度頭を下げた。

すると、隣の一ノ瀬さんが彼女にスッとハンカチーフを差し出し、怒り気味に口を開く。


「だいたい、妻のいる行基さんの子にするなんて、お前はバカか。俺にしておけばよかったんだ」

「まさか、あやさんが出ていかれるとは思わなかったもの。それに、妻のいない信明さんにしたら、嫁が来てくれなくなるでしょ?」


なるほど。
彼女は彼女なりに考え、妾という立場なら、私も行基さんの妻のままでいられると思ってあんな発言をしたんだ。
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