明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「まったく、それもバカだ。俺が誰のせいで結婚しないと思ってるんだ」


どういうこと?

一ノ瀬さんの言葉が理解できず首を傾げると、行基さんが私の横に来て腰を抱いた。


「し、知らない……」

「どうせお前は、父親が津田紡績の社長なら子を連れていかれずに済むと思ったんだろうな。元旦那の会社は取引先だし」


そうだったのか。

彼女のお腹の子が行基さんの子でないことなんて行基さんにはすぐにわかることなのに、どうしてそんな暴挙に出たのかと思ったけれど、子供を守るために彼の地位を借りたかったんだ。


「だけどな。社長秘書だってそこそこ顔が利くんだ。それに、お前と子のひとりくらい、養ってやれる」


えっ?

一ノ瀬さんがなにを言っているのかわからず、行基さんを見上げると笑いを噛み殺している。


「な、なに言ってるの? こんな出戻り……。それにこの子は……」
「出戻り結構。この子は誰がなんと言おうと、俺の子だ」
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