明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～
彼は行基さんの頭の中にある理想を実現するために必要な人なのだ。


「章子、帰ったぞ。あやさん来てるのか？」
「はい」


玄関から一ノ瀬さんの声がして、章子さんは返事をしている。

しまった。
おしゃべりがすぎて時間が経つのを忘れていた。

一ノ瀬さんが帰ってきたということは、行基さんも帰っているはずだ。と思ったら……一ノ瀬さんと一緒に行基さんも顔を出した。


「やっぱりここにいた。あや、家でおとなしくしていなさいと言っただろ」

「章子さんのところはいいでしょう？　お産婆さんからも、そろそろ動いて陣痛を促すようにって言われてるんですもの」


彼は少し過保護すぎる。
出産の予定日が目前に迫り、寝ているようにとばかり言うのだ。

悪阻がひどくて寝ていた時期が長かったので、やっと動けるようになったところなのに。


「はー、そうだけど、心配なんだ」


大きなため息をつく行基さんを見て、一ノ瀬さんが肩を震わせ笑う。
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