明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
この日に備えて仕事をやりくりしてくれていたようで、休んでついていてくれる。
こんな旦那さまは珍しい。


「んー」


どんどん陣痛が強くなり、痛みを増していく。


「まだ我慢してください」


産婆さんにそう指示をされても、苦しさのあまり「あぁっ」と声が漏れてしまう。


「あや、あや……」


行基さんは時折私の額ににじむ汗を手拭いで拭き、まるで自分も痛みを感じているかのように顔をゆがめる。


「はっ、はっ……」


息を荒らげ苦痛に歯を食いしばる。


「少し下りてきましたよ。そろそろ頑張りましょうか」


陣痛が始まりほぼ一日経った頃。
産婆さんの言葉に「これからなのか?」と行基さんが大きな声を上げた。


「そうです。これからが頑張りどきです。旦那さん、外に出てください」
「いえ、ここにいます」


行基さんの発言に驚いていた。

出産にはたくさんの出血も伴うし、産婆さんに任せるのが当たり前。
こうして陣痛の間、一緒にいてくれたことすら貴重なのに。
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