明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
興奮して起き上がると、行基さんが私を止め背後から抱きしめる。


「大丈夫だ。死ぬわけがない。俺とお前の子が死ぬわけがない」


大切な人がどんどん亡くなるという不幸を経験してきた彼が、もしかしたら一番不安だったんだ。

私の命も含めて失ってしまうかもしれないと不安で、こうして一緒にいてくれたんだろう。


私は、彼の不幸の連鎖を止めるためにここにいる。
そして彼は、私を幸せにするためにここにいる。


あの子は生きなくちゃいけない。
生きるために産まれてきたの。


行基さんの腕を強く握りしめ、息を呑みながら産婆さんの処置を見守る。

すると……。


「ギャー。オギャー」
「あっ……泣いてる」


元気な産声を聞いた瞬間。
目からポロポロと涙がこぼれてきて止まらなくなった。

そして私の手には、私の物ではない涙もポタポタと落ちてくる。


「あや……ありがとう。ありがとう」
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