明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「さぁ、抱いてあげてください。男の子ですよ」


産婆さんが顔をくしゃくしゃにして笑みを作り、私に赤ちゃんを抱かせてくれる。


「初めまして。私たちのかわいい宝物」


小さくて壊れそうな赤ちゃんの手に行基さんがそっと触れると、指をギュッとつかんでいる。


「おぉ!」


それに驚く行基さんがおかしくてたまらない。


「行基さんも抱いてください」
「あぁ」


彼はいつもの威厳はどこにいったのか、おっかなびっくりという感じで赤ちゃんを受けとり抱いた。


「生まれてきてくれて、ありがとう」


そして囁いた言葉に目頭が熱くなる。

すると彼は今度は私に視線を移して再び口を開く。


「あや、俺に出会ってくれて、ありがとう」


彼の優しい言葉に、我慢しきれず再び涙があふれだしてきた。



そのとき、鏡台の上に置いてある懐中時計が視界に入った。

あの懐中時計は、これからも私たちと一緒に時を刻み続けるだろう。
私たちが幸せのねじを巻き続ける限り、ずっと——。



【完】
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