明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～

最初こそ険悪な雰囲気だったものの、少し意見が違うだけでその作品を好きという根本は同じで、初子さんとその男性——周防公平という新聞記者は意気投合し、私をそっちのけで文学談義を交わしている。


私はその間に入りたくても知識がなく、お茶をすすりながら待っていた。


「あっ、ごめんなさい。もう帰らないと」

「きみと話していると時間が経つのも忘れそうだ。こんなに熱くなったのは久しぶりだよ」


周防さんは満足げに微笑む。そして……。


「また会えないでしょうか？　他の小説の話もしたい」

「それはうれしいです。……でも男の方に会うために出かけたいなんて、口が裂けても言えないわ」


すでに初子さんが子爵令嬢であることを聞かされていた彼は、残念そうに肩を落とす。

その様子を見て、私はなんとかしてあげたいと考えた。


「初子さん、私と一緒に出かけることにしましょう。ふたりがお話している間、私が初子さんのフリをしてどこかで時間を潰しています」