明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
母からは家の仕事を言いつけられはするが、初子さんが強く言ってくれたおかげか、姉妹の時間は持たせてくれる。

だから、ふたりで出かけることならあやしまれずにできそうだ。


「そんなの、あやに悪いもの。できないわ」


初子さんは首を何度も横に振ったが、私はにっこり笑う。


「初子さん、なんだかとっても輝いてるわ。私はそれがうれしいの」


子爵令嬢としての振る舞いを常に求められる彼女は、家でも気が抜けるのは自分の部屋にいるときだけ。

小さい頃は取っ組み合いの喧嘩もしたが、女学生になるとそうもいかない。

“羽目を外す”ということが許されない彼女は、成長するにつれ笑顔が減っていた。

私は、一橋家の令嬢という枠から外れはしたが、自由になったと感じている。

まつに頼まれ買い物に出ても、誰に注目されるわけでもなく好き勝手に歩き回れる。
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