明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
制帽に詰襟、金ボタンの学生服。背筋をピンと伸ばして歩くふたりの男性は、私よりもずっと背が高い。

おそらく帝国大生だ。
ということは、上流階級の人なんだろう。


私と同じ海老茶色の袴をはいた女学生“海老茶式部”もちらほらいる。

女学校に行けるのはほんの一握りの選ばれた人間だけの特権だ。

その権利があるかどうかは、生まれ落ちた瞬間に決定する。
家柄の良し悪しがすべてだった。


それから街中を歩き始めると、たくさんの商店に目を奪われる。

いつも言いつけられた買い物にはやってくるが、時間が限られているためお目当ての店に一直線。こんなにゆったりと歩いたことなんてない。


「あっ、洋服の仕立て屋さんだわ。ミシンよね、あれ」


いつもは用がないので通り過ぎる店から、カタカタカタという軽快な音が聞こえてきて窓から中を覗くと、店主が白い布をミシンで縫っている。

繕い物はよくするが、もちろんミシンなんて使ったことがない。
どういう仕組みになっているのか興味津々。
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