明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
周防さんに早く会いたいという気持ちが、ひしひしと伝わってくる。


「いってまいります」


私の着物を纏った初子さんが玄関で声をかけ、外へと飛び出す。

いつも見送りはないのでバレないとは思っていたけれど、さすがに手に汗握った。


「大成功ね」
「よかったー。初子さん、楽しんできてね」
「ありがとう」


初子さんとは近所の神社で別れ、早速探索の開始だ。

けれども、女学校の袴姿なのだから、一応子爵令嬢の振る舞いをしなくてはならない。

街の中心街までやってきた私は、初子さんに「なにか食べて」と一銭を握らされていたものの、なにを食べたらいいのわからず右往左往。

いや、食べるより、行きかう人を見ているだけで楽しい。

買い物に出たときに何度も見た光景のはずなのに、気持ちが違うと目の行く場所も違う。


「あの人も女学生かしら……。あの三つ揃えの男性、なんだかサイズがあってないわ」
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