明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
相変わらず母が鬼の形相で私を追い立てる。

それでもなかなか手が進まないのは、準備が終わるということは、初子さんと津田さまが顔をあわせる時間になってしまうからだ。

まるで初子さんの恋路の邪魔をしているような気になってしまい、私もまた苦しくてたまらない。


しかし無情にも時間が迫り、真新しい上質な着物を纏った初子さんは部屋から連れ出されてしまった。

艶やかな朱色のそれとは対照的に初子さんは血色を失っており、いまにも倒れてしまいそうだ。

心配でたまらなかったけれど、母の前で初子さんに声をかけることができず、私は奥に引っ込んだ。


「津田さまがお越しになりました」


まつの声で、父と母が玄関へと向かえに行く。
私はその様子を隠れて見ていた。

せめて、津田さまがよい人でありますように……。

そう願った瞬間、津田家の両親に続き、すこぶる背の高い男性が姿を現した。
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