明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
初子さんが発見されたのは、翌朝、丁度日が上がった頃だった。

周防さんと互いの手首をひもで縛った状態で、街の中心を流れる川の下流で見つかったのだ。


葬儀が終わり、土の下深くで永遠の眠りについた初子さんに話しかける。


「私が余計なことを言ってしまったのよね……」


彼女が亡くなってから、あの手紙を何度も読み返した。


【あなたが私の幸せを見たいといってくれたとき、気持ちがかたまりました】


初子さんはそう書いていた。

もしかして、彼女にとっては勇気をもって意のままに従うという意思表示だったのかもしれない。

だけど、私があんなことを口にしなければ、周防さんのもとに走ろうとは思わなかったかもしれないのだ。

もちろん私は、行基さんとの幸せのことを言っていた。
でも、初子さんの幸せは、周防さんとの間にこそあったのに。

私はそれに気づくことなく、背中を押してしまった。


「初子さん……ごめんなさい」


新しい木でてきた墓標に触れ、ひたすら涙を流す。


「着物もかんざしもいらないの。初子さんと一緒に、お団子が食べたかった……」


涙が止まらなくなった私は、それからしばらくそこを離れることができなかった。
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