明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
愛されたい
初子さんがいなくなってから、孝義の落ち着きがなくなってしまった。

それはおそらく、父が津田家との縁談がなくなり、この先の一橋家のことを心配して一日中イライラしているのと、母が我が子を亡くしたという喪失感から抜け殻になり……誰も孝義のことを気に掛ける余裕がなくなったからだ。


でも私は、初子さんに孝義のことを託された。

母と同じように、いやそれ以上に、初子さんの死が悲しくてたまらず打ちひしがれてはいたけれど、しっかりしなくちゃと心を奮い立たせて日々を過ごしていた。


そんな中で私の心の支えになっていたのは、初子さんにもらった櫛と、あの懐中時計。

時計はねじを巻かねばならず、毎朝欠かさず巻きあげている。

ずっと泣いていようが、次へと進む努力をしていようが、等しく時は過ぎていく。

それなら、明日は笑えるように尽力するほうがずっといい。
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