キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
「アズサ。誰かパラソル持ってたの見た?」


今度は小学校の先生を思わせる口調のツバキ。

私はまだみんなの言いたい事が理解出来なくて、首を横に振る。


「だよね。じゃあこれは誰が持って来たんでしょう?」


私は小学生か‼

相変わらず先生口調のツバキに突っ込みたいのを飲み込み、疑問形の答えを優先させ考える。


まさかとは思うけど……

私が何かを思い付いた顔をするのを三人は満足そうな顔で見ていて、私の考えが当たりなんだと無言の正解を出す。


「向こうで寝てるからお礼言っておいで」


広げられたパラソルは今はきちんと畳まれてサクラの手の中に二本とも収まり、サクラから手渡される。


サクラの視線の先を見ると少ない海水浴客の中、すぐにその人物が目に入った。
私はパラソルを抱え、三人に背を押されしぶしぶ歩きだす。




「これ、ありがと」


私の声に反応して顔にかけていたタオルを手で取り、寝転んだまま笑顔を見せる陽亮。


「寝顔かーいーね」


優しく微笑み茶化す陽亮に、今だけはパラソルのお礼に突っ掛かるのはやめた。


上半身を起こす陽亮に近づき持っていたパラソルを渡そうとした時、陽亮の体が一面に真っ赤になっていることに気付いた。


「ゴメン‼私にパラソル貸してくれたから陽亮が日焼けしちゃったんだね……」


見るからに痛々しい日焼けというより、軽い火傷状態の体。


陽亮の事をぶった私なんかになんでそんなに優しくしてくれるの?


「あー、これ?全然たいしたことないよ。それにちょうど少し焼きたいなって思ってたし」


明るく言うけれど、放って置けば水ぶくれになって大変な事になる。
陽亮の言葉に応える前に、私は自分の荷物の置いてある場所へ走って戻った。
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