キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
教室内を取り囲む別れを惜しむ声を抜け出し、高校一年生を一年間過ごした教室の1番後ろの廊下側の机を手でなぞる。


ここでどれくらいの時を過ごしただろう。
ここでどれくらいの思い出を作っただろう。

最悪だった席。
でも最高だった場所。

廊下から響いてくる遠い笑い声と泣き声のざわめき。思い返すのは眩しいくらいの大切な想い。




「やーっぱここにいた」


開け放たれた前の扉からサクラが顔を出す。


「アズサいた?」

「うん、いるいる!」


続いてカエデとツバキもサクラの後ろから卒業証書を肩に乗せて笑顔を見せる。


「バレたか」


とは言いつつも、来る予感がしてて驚きはしない。何と無く、何と無くだけどみんなも来る気がしてた。


『約束』なんてものは必要ない。
ただあるのは『同じ想い』だから。



散々昨日の晩話し合ったのに、ここに来れば思い出話の花が咲く。くだらないけど尽きない笑いが込み上がる。


でもいつまでも居られない場所に別れを告げ、私たちは思い出をこの小さな教室に刻み、そしていつもの場所へ向かった。
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