キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
「陽亮君はよかったの?」

「うん。明日も会うし。それに陽亮も友達と卒業パーティーするって」


カラオケのテレビ画面に映る昔っぽい映像を見ながら、机に広げられたお菓子をつまむ。何かある度に足を運んだこの場所は、歌うより多くの会話が鳴り響く。


「長かったようで短い三年間だったね」


珍しくカエデが真面目な顔で静かに言う。


「そうだね……。ツバキはいつから仕事始まるの?」

「4月の……いつだったっけ」

「忘れるなよ‼」


しんみりとした空気の中わざと明るく言うけれど、どことなく空振りな突っ込み。


「そろそろ出る時間だね」


サクラも今日ばかりはいつもの輝く笑顔がない。

永遠の別れでもないのに、それくらい卒業の二文字がこんなにも重たい。



レジカウンターで会計を済ませる私たちが重たい空気で、店員も接し方がぎこちない。それ以上に今までないぎこちない四人の空気。


カラオケBoxから出て、もう陽が傾きかけて月がうっすら見えてるのに誰も帰ろうとしない。
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