キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて

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八月中旬のじとじとと降り注ぐ雨の中、久しぶりに足を運ぶいつもの場所。

何ヶ月振りだろう、あそこへ行くのは。


アマガエルがゲコゲコと歌を歌い、雨特有の生臭い匂いが鼻を刺激する。

雨に濡れないように身を屈めて傘片手に自転車を漕いだ。


『送ろうか?』と免許取りたての陽亮からの電話は嬉しかったけど、この場所は自転車を漕いで来るのが好きなんだ。



大通りにポツンとあるカラオケボックスに着くと、赤、ピンク、白の傘をさした子たちの前に降りる。


「雨降ると更に暑いね」


と言いながらもサクラの爽やかさは全く衰えない。

屋根付きの自転車置き場に停めて紺色の傘を持ち駆け寄る。


「入ろ入ろ!濡れちゃうし」


ツバキが急かし、きちんと傘を畳んで鍵付きの傘置き場に傘を挿す。


カウンターでとりあえず一時間の予約を取り、303の部屋へ案内された。店員がパタンと扉を閉めて出ていけば、ここは無法地帯と化す。
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